国際社会での企業経営の在り方(トヨタの例)

トヨタは今度モデル・チェンジを行なった。従来はモデル・チェンジをするたびに販売価格を下げていたが、今度は下げずに上げた。

また、松下電器は薄利多売の経営方針を改めることを明らかにした。この二つの例など、新次元にはいった日本経済に対する企業側の反応をはっきりと示すものであろう。新次元の企業経営にとっては、とくにつぎのことを念頭におく必要がある。

第一に、経済の成長が高い間は、賃金を相当上げても物価を上げずにすんだが、経済の伸び率が鈍れば、賃金上昇が物価上昇に直結する傾向が強まることは否定しえない。そのなかで物価をできるだけ上げないでいくためには、企業の金利負担を下げていくことが肝要である。それには、内部蓄積をふやし、自己資本比率を高めなければならない。それと同時に、政策当局も金利水準を引き下げていくことが必要である。

第二は、従来のように、外国技術に依存して伸びる時代が終わり、これからは自主技術の開発に全力を注ぎ、それによってもうけていくという段階にはいったことを認識することである。

第三に、GNPの伸びが鈍化すると同時に、GNPの構成内容が変わっていく、その方向をよく見定めて、それに適応した経営方針をとらねばならない。

GNPの構成内容の変化は、すでに生じているが、今後その傾向はさらに強くなると思われる。その最も特徴的な現象は、民間設備投資の比重がしだいに落ちてくることである。今までは民間設備投資の比重が高い形で景気をリードしてきたが、その比重は漸落して、第一に個人消費、つぎに財政投資、さらに輸出の比重が強まっていく。

このような経済の型の変化をよくみつめたうえで経営の方向を考えるべきだ。しかも、設備投資自体の内容も変わってくる。製造部門の比重が落ちてきて、非製造部門――電力や、レジャー設備、ガス、運輸などの部門―― の比重が増してくる。つまり、生産設備よりも、国民の生活を直接的に引き上げるのに貢献するような設備に重点が移っていくことになる。

国内の投資は、工場の新立地条件が悪くなってきており、公害問題が深刻化し、労働力も不足しているということから、伸びが鈍らざるをえない。そこで対外投資の比重はどうしても大きくならざるをえないであろう。このことを他の角度からみると、生産性の低い産業、企業は、かなりの勢いで淘汰される段階にはいった、ということを意味する。生産性の低い産業部門は、いやおうなく、早めに手を打たなければならない段階にきている。