今後問題になってくるであろうセクター

いちばん問題になるのは、軽工業、そのなかでもとくに中小企業である。

今度の低開発諸国に対する特恵関税の設置は、この部門に最も影響が大きい。低開発諸国からの輸入品のなかには、安い賃金を利用した労働集約的な工業製品、軽工業の加工品が多い。それと競合関係にある中小企業は、ちょうど今、日本の繊維産業の脅威をヒステリックに叫んでいるアメリカと同じ運命をたどる公算が大きい。

日本は今、アメリカに「そういう産業を保護するより、産業の再編成をはかるべきだ」といっているが、そっくりそのことばが、数年ののち、低開発諸国から日本にあびせられる可能性が強いように思われる。

また、労働力不足の影響を最初にうけるのもこの部門である。今さかんに論議されている円切上げがもし実施された場合、いちばん大きな打撃をうけるのもこの部門である。しかし、円切上げで最も影響をうけるのが中小企業だからといって、中小企業だけに特別の対策をとることはできまい。

なぜなら、円切上げによる打撃に対する対策、補償措置をとるとすれば、中小企業にも大企業にもひとしく実施すべきだという反論が当然予想されるからである。したがって、円切上げよりも、中小企業分野の製品について関税の引下げや輸入の自由化を実施し、それによってこうむる打撃に対しては、産業転換の援助を与え、中小企業の産業転換を促進すべきである。

また、対外投資の比重を徐々に高めるためには、先ほども少し触れたが、日本全体の金利水準を下げることがなによりも必要である。対外投資を行なう場合、相手国の通貨を使用する。

したがって、もし円切上げの懸念があれば、対外投資は阻害されることになる。というのは、円の切上げが問題になる場合、 一度だけではすまず、何度もくりかえし問題になるおそれがあるからだ。日本が今後成長していくには、原材料を今のようにはとんど外国企業に依一仔しているようではいけない。外国企業に依存すればするほど、向こうのいいなりに買わなければならないことは、今度の石油の例をみても明らかである。原材料の安定確保のためにも、対外投資は絶対に必要なのである。